企画から製品になるまで

[ TRANSIC MD 小寺 ]

VANTAS最初のシリーズが発売されたのはもう5年以上も前のことです。
それから時代はキャッシュレス化が進んで、街では財布の形もよりコンパクトなものを多く見かけるようになりました。

今のVANTASの財布シリーズは、収納力が高く、サイズも大きめなラインナップ。
もう少し薄くてコンパクトな財布も欲しいよね、という会話から三つ折り財布の企画は始まりました。

目指した大きさは、片手の中に収まるサイズ。
VANTASシリーズは使い込むほど味が出る特徴のイタリアンレザーを使用していますが、今までの革はしっかりとした硬さがあるスムース革でした。
二つ折りや、ラウンドファスナーの財布は革面が広く重厚感が感じられますが、コンパクトな三つ折り財布には、2ヶ所の折りジワを感じさせない柔軟性のある革の方が合うのではないかと考えた結果、イタリア、トスカーナ地方のブレターニャ社の代表的な革、”アリゾナ”を選定することになりました。

出来上がった最初のサンプルは、イタリアンレザーの厚みを活かした、とって重厚な分厚い財布でした。
それを次のサンプルでは、革の特徴である強度と触感をそのままに、スリム化のため、できる限り薄く革をすいてもらい、小銭入れの大きさを全体のバランスと合わせてコンパクトになるよう調整をかけました。

[ TRANSIC MD 小寺 ]

続くサンプルでは軽くてスッキリしたフォルムになりましたが、革を薄くすきすぎてしまったせいか、イタリアンレザーの特徴である革の厚みを感じさせる触感がなくなってしまい、ペラペラの財布に。

せっかくの素材も加工を間違えると全く違う印象を与えることになりました。
再度、革のすき具合と内部の3つのカードホルダーの重なる位置を微妙に調整することで、コンパクトでありながら革らしさが感じられる財布に仕上がるよう、職人さんと何度も話し合いを重ねました。

何度目かに「カードホルダーの位置を3mm下げて欲しい」とお願いした時にはこんなやりとりもありました。
「3mmなんて縫製の誤差だよ！」「縫製の誤差は理解していますが、でもあと3mmなんです！」 このような微妙な調整で、ようやくこのイタリアンレザーの良さを活かせたフォルムに辿り着きました。

コンパクトで持ちやすいけれど、容量もたっぷりです。キャッシュレスにしてカード決済、スマホ決済もするけど、いざという時のために現金もまだ持つ必要がある、領収書も財布に入れたい、そんな働く人にオールマイティな財布に仕上がりました。

 VANTASシリーズの財布のデザインと作りは、余分なデザインや装飾を省いたシンプルイズベスト。革のよさを際立たせたデザインは、使い込むうちに経年変化する革が、”自分の財布”を作り上げていくことを楽しめます。 植物タンニンなめしは、クロームなめしに比べ、作る工程に何十倍もの時間がかかるため、非常に高価です。
そのため市場では、外側のみにイタリアンレザーを使用している財布が一般的。
でもVANTASシリーズは内側にも、外側と同じ革を贅沢に使用しています。その贅沢な雰囲気を、手にとって感じてもらえると、とても嬉しいです。