究極の取り都合

こんにちはTRANSIC MDの小寺です。
少しずつ春めいた風を感じる今日この頃です。

さて今回は、バッグや洋服で型紙に合わせて素材を裁断するとき、その取り都合が、ものづくりにどう反映されていくかをお話ししたいと思います。


素材のロスを減らす考え抜かれた裁断

革素材の上に置かれた型紙“取り都合”とは1枚の革や布地からどれだけ商品にできる部分を裁断できるか、ということです。

特に革などの自然素材にはどうしても使えない部分が出てきてしまうため、ものを作る現場では、この取り都合の効率を考えながらデザインし、素材を裁断することが求められます。

1枚の原材料から、いかに効率よく製品を作れるか、素材のロス率を低くすることは商品価格にも反映されますが、それ以外にも、資源との向き合い方にブランドの姿勢が現れます。
素材を無駄なく、捨てることなく使い切ることは、私たちTRANSICにとって日々向き合っている課題でもあります。


洋服と着物で異なる取り都合

生地に型紙を並べて型を取っている画像少し話は移りますが、先日“究極の取り都合”を考えた出来事がありました。

クリスマス、裁縫にはまっているヨーロッパの友人が母宛に手作りのクッションを送ってくれました。
喜んだ母からお返しに一度も袖を通していない着物をプレゼントしたいと連絡があり、私も着物のシルク生地を再利用できることを、友人も喜ぶかもしれないと思い、送る準備をすることにしました。

母が送ってきた3枚の着物のうち、1枚の着物は裏地がだいぶ汚れていたため全て手でほどき、表地のみを送ることにしたのですが、その過程で着物の生地の幅がものすごく狭いことに気がついたのです。

そこで母に確認したら、基本的な着物の幅は36〜38cmとのこと。
一方、洋服を縫う生地の幅は多くが100cm前後です。
友人が着物で洋服を縫う場合、生地幅が短いので洋服のパーツを横幅で取れないことが多い、裁断するのに取り都合を工夫する必要がある、というのです。

送る前に教えて欲しかった。。と心の中でつぶやいたのですが、すでに友人から「この生地でブラウスを作ったら合いそうだね」、と楽しみにしている旨の返事をもらっていたので、これでブラウス縫えるかな、ちょっと大変そう。。と思いながら、送らないわけにもいかず、何を作るかは友人に任せることにしました。


取り都合の極み「日本の着物」

着物生地西洋と日本とで布地の違いを実感した私は、着物の取り都合について調べたところ、着物は一枚の長い布地から、一つの無駄がでることなく仕立てられるように考えられた“究極の取り都合製品”ということがわかりました。
着物の裁断の構成図(引用:小林呉服店ホームページより)

着物は、基本的に横幅いっぱいをそれぞれのパーツの長さに裁断した四角のパーツを組み合わせて作ります。
捨てるところがほとんどなく、なんて合理的に作られた型なんだろうと感心しました。

この考え方から、西洋と日本の身につけるものに求めたものの違いもわかります。
着物は生地から色々な形をとることはなく、型はほぼ決まっています。
その分、布地の柄や織りで独自性が出るよう工夫されました。
一方、西洋の洋服にはさまざまな形があり、型に個性とトレンドが現れますね。

限りある資源を無駄なく、効率的に使用する知恵は、日本の古くからの技術にも息づいていて、ものづくりの姿勢を改めて自国に感じた出来事でした。

私たちの取り扱う商品では本革から作られているものがたくさんあります。
TRANSICの自社ブランドでも、企画段階からこの大切な資源をどこまで無駄なく商品に使用できるかを引き続き考えていきたいと思います。

さて、そんな時間を経てようやく到着した着物をみて友人が一番びっくりしたこととは、、、着物は全て手縫いだったことでした!

工業化がいち早く進んだ欧米では、非常に珍しいことだったんですね。
人によって見るところは違うなぁ、と感じた小寺でした。